最高裁判所第三小法廷 昭和47年(あ)389号 決定 1972年8月23日
本籍
東京都品川区大井二丁目四一二三番地
住居
神奈川県川崎市有馬二五二八番地
トルコ浴場業
川田和生
大正八年一〇月一二日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について、昭和四七年一月二六日東京高等裁判所が言い渡した判決に対し、被告人から上告の申立があつたので、当裁判所は、次のとおり決定する。
主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人後藤昌次郎、同大野正男連名の上告趣意第一点は、単なる法令違反の主張であり、同第二点は、原判決の認定と異なる事実を前提とする判例違反の主張であり、同第三点は、単なる法令違反、量刑不当の主張であつて、すべて刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。また、記録を調べても、同法四一一条を適用すべきものとは認められない。
よつて、同法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 下村三郎 裁判官 田中二郎 裁判官 関根小郷 裁判官 天野武一 裁判官 坂本吉勝)
○昭和四七年(あ)第三八九号
被告人 川田和生
弁護人後藤昌次郎、同大野正男の上告趣意(昭和四七年四月二七日付)
第一点 原判決には理由不備もしくは審理不尽の違法があり、これを破棄しなければ著しく正義に反する。
一、総論
原判決は「いわゆる割当納税の慣行は、それ自体納税貯蓄組合法に違反するのみならず、それがあるからといつて組合を通して納税する各組合員個人の正当な納税意思を阻害すべき理由はなく、ことに昭和三四年既に日本国に帰化した被告人の昭和四〇年、四一年当時の本件犯行につき、脱税の犯意阻却或いは適正納税の期待可能性を欠く等の事由とは到底考えられない」旨判示して弁護人の所論を排斥している。
ところで、犯罪が成立するには、行為者が単に行為の具体的事実を認識するのみでは足りず、その行為が違法であることの認識を必要とする。違法の認識は、いわゆる自然犯においても犯罪成立の要件であるとするのが近時の通説(佐伯千仭「刑事裁判と人権」二三六頁以下、福田平「違法性の錯誤」、団藤重光「刑法綱要」二二六頁以下。木村亀二「刑法総論」三〇六頁以下)であるのみならず、ドイツ連邦最高裁判所の判示するところである(ドイツ連邦裁判所刑事連合部一九五二年三月一八日判決)。まして、多くの形式的、技術的禁止規定をもつ、いわゆる行政犯においては、特に違法の認識を必要とすると解せられる。
本件でいえば、犯罪が成立するためには、被告人が、自己の所得を税務署に申告するに当つて、申告所得が実所得より過少であることの認識のみならず、それが違法であることの認識を必要とする。
すなわち、納税申告は徴税当局の便宜並びに納税者の便宜から、その申告に当つては両者間で話合が行なわれる場合が多く、又徴税当局が課税するに当つても、必ずしも納税者の所得の現実の所得を全面的に把握しえない場合でも職業の種類や過去の実績等の要素を勘案して推定的計算によつて課税することも認められているところである。
後に詳述するように、在日韓国人の所得税の課税に当つては、在日韓国人におかれている特殊な状況や、その実所得が必ずしも把握し難いこと、在日韓国人の納税知識の不充分さ等の点から、在日韓国人納税貯蓄組合が所得税申告の実務を代行し税務当局との間で所属組合員全体としての税額ないし税率を話合いでとりきめた上、所属組合員に割合て申告していたのである。
原判決は、かかる慣行の存在を暗に認めつつなおそれが納税貯蓄組合法に違反していることをあげて、弁護人の所論を排斥しているのであるが、右にいういわゆる割当納税の慣行が同法に違反しているか否かは、被告人の違法の認識と直接の関係がない。
被告人は現在日本国籍を取得しているが、もとより人種的には韓国人であり、在日韓国人品川納税貯蓄組合に所属していた者である。そして在日韓国人はわが国における不幸な迫害の歴史およびその差別的な社会的地位よりして、強い連帯の意識と組織を作り出さざることをえなかつたのは公知の事実である。
そのような事情の下に、被告人が右組合に加入していた以上、その組合の指示、指導によつて納税を行うことは、社会的事実としては誠に無理からぬものがある。
そして、原判決がその存在を肯認するいわゆる割当納税の慣行は、その内容如何によつては、被告人の違法の認識並びに国家の科刑権の限界の問題に重要な影響を来たすべきものである。すなわち、その慣行が税務当局の諒解の下に生じたものであり、税務当局と右組合との話合によつて所属組合員の納税額等が定められたものである限りは、所属組合員たる被告人がその指示によつて納税することが税務当局によつて認められたものであり違法でないと信ずるのは蓋しやむをえないところであつて、これに違法の認識がありとすることはできない。そして他面、かかる慣行が税務当局において事実上認められてきた限り、客観的にみて違法であつても、それを信じて行動したものに刑罰を加えることは国家の道義性の観点からいつて許されるところではない。
右の割当納税の慣行がかりに違法であるとしても、いやしくも国家の徴税権限を付託された税務当局において、右の如き割当納税の話合を右組合と行いこれに諒解を与えているという事実が存するならば、これを信じて納税申告を行つたものは保護されるべきである。刑罰は国家の道義的権威に裏づけられていなければならない。国家機関が違反行為の誘因を作つている限りは、国家が道義の名において刑罰を科することは、その本質的な存在理由と矛盾する。
従つて原判決は、割当納税の慣行の存否、その具体的内容、規範性、適用の範囲等の諸事情を確定した上で、弁護人の所論(違法性の認識並びに国家の科刑権の限界)について判示すべきであり、何らこれをなすことなく、暗に慣行の存在を認めつつ、それが納税貯蓄組合法に違反し、かつ被告人が形式的に日本国籍を有するとの一事をもつて、これを排斥したのは理由不備ないし審理不尽の違法があるというべく、右は判決に影響を及ぼすこと明らかであるから、これを破棄しなければ著しく正義に反する。
以下具体的事実について更に詳論する。
二、各論
(一) 原審における弁護人らの主張
弁護人らは、控訴趣意第一点中、「被告人に対しその所属する品川区韓国人納税貯蓄組合の組合員として昭和二三年以来の納税方法、同組合の納税指導等から真実の申告納税を期待することはできないのであつて被告人には超法規的責任阻却事由があつたといわねばならない」との点について、控訴趣意補充書において論点を更に分析し、「被告人の犯意の有無・真実の申告納税に対する期待可能性の有無については、被告人の属していた韓国人納税貯蓄組合における納税の申告納付その他に関する納税事務代行の有無・態様・韓国人納税貯蓄組合設立の経緯、税務署当局との関係について、周到にして確実な事実の認定がなされなければならない。けだし在日朝鮮人ないし朝鮮民族(国籍の如何を問わず)の特殊な地位や生活の現実の具体的把握なくして、一般日本人の場合と同様と速断することは、過少申告の認識の有無ないし、違法性の認識との関連において、重大な事実誤認を招来する危険があるからである」と指摘した。原審は弁護人らの主張事実の有無について審理するため弁護人ら請求の証拠のみならず、検察官請求の証拠についても取調べた。そして弁護人らの主張は充分に立証された。ところが、原判決は弁護人らの提起した右問題に対する判断を全く回避したのである。原判決の判示で足りるならば、原審における証拠調は不要だつたはずであり、原審が証拠調をしながら右問題点の判断を回避したのは、明らかに理由不備ないし審理不尽といわなければならない。
(二) 韓国人納税貯蓄組合における所得税申告事務代行の実態
(1) 申告事務代行の実態
韓国人納税貯蓄組合組合員の所得税申告の実務はすべて組合が代行していた。そして代行するについては、組合幹部が税務署当局との間で、所属組合員全体としての税額ないし税率を話合いでとりきめた上、所属組合員に割当て申告していた。この点については、本件当時、被告人の所属する組合の事務部長として所得税申告の実務を担当していた証人金珍寧、被告人と同じく組合員であつた証人文永赫、組合の上部団体である在日韓国人納税貯蓄組合専務理事である証人羅鐘郷の各証言によつて明らかであり本件当時品川税務署所得税二課三係長であつた証人押田義男の証言がこれを裏づけている。
(イ) 証人金珍寧の証言
問(後藤弁護人) 所得税について申告する際、納税貯蓄組合の方で各組合員のものをまとめて出すことになつていたのですか。
答 そうです。
問 実際にもまとめて作成し、提出したのですか。
答 そのとおりです。(一三冊一二四丁)
…………………
問 「納税の申告、納付その他に関する納税事務の代行」について、実務としてどのような方法でやつていたのですか。たとえば一人ひとりに実情をきき、各人の帳簿を点検した上でやつていたのですか。
答 組合員は実際問題として帳簿をつけたりしませんし、税務あるいは所得に関することを何も知らないでおりまして、従つて準備もしていなかつたのです。だから私たちにおいて、それぞれ従来の納税に関し、その申告内容を見、適当な判断でやつていたのです。
問 従来の申告とか適当な判断といいますが、その基準があつたのではありませんか。あるいはそのようなものもなく、納税貯蓄組合が勝手にやつていたのですか。
答 私の場合、上司に専務とか組合長がおりましたが、その方たちから、昨年に較べ今年はこれだけ所得が上廻つたからこれをアルフアするようにといわれ、それに基いてやつていたのです。
問 専務とか組合長は、勝手にそのような指示を出していたのですか。
答 きくところによりますと、事前に税務署当局と相談をし、それに基きやつていたようです。(同一二一丁)
…………………
問 昭和四〇年度の所得税申告については関係したわけですね。
答 はい、関係いたしました。
問 そのときには、上司の方から何割くらいプラスアルフアしてやれといわれましたか。
答 はつきりした記憶はありませんが、二〇パーセントアツプだつたように思います。
問 それは、所得額を二〇パーセントアツプにしたということですか。あるいは納税額を二〇パーセントアツプにしろということですか。
答 所得額を二〇パーセントアツプにして、納税額を計算しろということだつたのです。
問 すると、前年度の収入額を二〇パーセント増にして計算し、申告をしたというわけですか。
答 そのとおりです。(同一二三丁)
(ロ) 証人文永赫の証言
問(大野弁護人) 納税の方法について、昭和二七年ころから昭和四一年ころまでの間、実際に申告用紙などの書込をやつたのはどなたですか。
答 納税貯蓄組合に委任といいますか、大体全部を納税貯蓄組合にお願いしてきたわけです。
問 細かく帳簿をつけたり、伝票を作つたりはしていないのですか。
答 はい、そういうことはしておりません。(同一三七丁)
…………………
問 すると証人は、昭和二七年から三九年ころまでの間、一回も自分で記入したことはないわけですか。
答 そうです。
問 納税額は知らされ、それは自分で納めたわけですか。
答 そうですが、それも納税貯蓄組合で、集金といいますか、集めに来るわけです。そして預り書といいますか、領収書のようなものをいただき納入していたのです。
問 その場合、額だけは事前に通知されるわけですか。
答 そうです。
問 なぜ、そのような額になるのか、つまり総収入についていくらと申告し、あるいは支出がいくらで控除額がいくらなどという明細に関しては、証人として知らなかつたのですか。
答 はい、知りませんでした。(同一三八丁)
(ハ) 証人羅鐘郷の証言
問(検察官)-このしおり(註、東京国税局「納税貯蓄組合のしおり」)の五頁目の最終行から二行目に組合または組合員は、自己以外の課税に関与してはならない。納税貯蓄組合または組合員は、自分に関する場合はさしつかえないが、組合の名で組合員のために、または甲組合員が乙組合員のための租税の賦課について関与することができないこととなつていますとあつて、組合は組合員の納税代行をしてはいけないことが書いてありますね。
答 これにはこうなつていますが、先程もいつたように、納税貯蓄組合(註、韓国人の組合をさす)は、設立当時からの特殊な事情によつて継続して、いまでも組合がそういう業務を代行しているのが事実なのです。申告書が個人宛に送つてきたのは組合に集めてそこで書いてやり、申告も一括してやつているのが現状なのです。(同一六四丁)
…………………
問(検察官) 各支部の事務局長とかいう人に、韓国人は特殊な地位にあるのだから、真実の申告をしなくてもいいのですよ、税務署と話合つた金額を納めてればそれが本当の金額でなくてもいいのだと指導したことがありますか。
答 そういう指導はしていません。いずれにしろ、最初からずつと税務署との話合いで、甲なら甲の納税については去年はこれだけの実績だつたから本年はこうだと申告し、これでは不当だからもう少し殖やせとかいう話合いをしているわけなのです。そういうことをしていても、私共は不正な申告をしろとはいつていません。(同一六五丁)
(ニ) 証人押田義男の証言
同証人は、昭和二一年に東京国税局に入り、以来同四一年一月江東西税務署を退職するまで、公務員として税務に携わつてきたものであり、退職後も、税理士として税務当局とふかいかかわりをもつ職業にあつて、税務当局に不利なことないし税務当局の機微に関することについては、正面切つて証言できない立場にある。検察官が右質問で指摘しているように、納税貯蓄組合または組合員は申告、納税の事務を代行してはならないのであり、それは納税貯蓄組合法第七条によつても禁止されているのであるから、これに違反する行為を税務当局が認めていたというようなことは、同証人が税理士としての地位を棒にふるか、少くとも税務当局との関係で税理士としての業務上の各種の便宜を犠牲にすることを覚悟しない限り、できないことである。
そこで同証人は、事実を認めまいとする。しかしその揺れ動く証言の中から隠しても隠せおおせぬ真実が姿を現わしているのである。本件当時、同証人は品川税務署の所得税二課三係長として韓国人ないし朝鮮人の課税事務を担当していたのであるが、検察官の問に対して、昭和三八年七月品川税務署に移つたとき、定期移動時の毎年の恒例として韓国人の団長とか役員が挨拶に来る、その中に鄭さんというのは韓国人民団の専務理事であつた旨答え、更に「鄭さんの方は、民団の専務理事をしておられ、数字にも若干明るく、税法についてもちよつとくわしいということで、組合員の申告で計算など、そのようなことをやつていて、たまたま税務関係でわからないことがあつた場合、私のところか、あるいは二係長のところにこういう場合どうしたらいいだろうと、ききに来られたと思うのです。私の方は普通の納税者に対すると同じようにわからないことは教えてあげるという立場ないしは考えでそれに対していたわけです」と証言し、検察官はこれを「三月の確定申告日になると、白色申告の人など税務署に多ぜいの人が来られるようですが、それらの人に係の人がいろいろと話しておりますけれども、それも同じ意味ですか」と誘導しているが(同二一八丁以下)、右の証言の中の「組合員の申告で計算」という一句の中で事の真相がズバリ現われている。
すなわち鄭は組合の専務理事として、組合員の申告事務を代行していたものにほかならない。同証人はこの事実を隠そうとして、当時同証人が鄭が組合の専務理事であつたことを知つていた事実をごまかそうとした。
問(後藤弁護人) 専務理事という地位は、民団にはなく、納税貯蓄組合にあつたのではありませんか。
答 なし。
問 証人は鄭さんが民団の役員としてではなく、納税貯蓄組合の専務理事という資格で来ていたことを知つていたのではありませんか。
答 納税貯蓄組合法について、韓国人の場合をみたことがないので当時よくわからなかつたのです。
問 組合法や組合規約を見たとか見ないということでなく、鄭さんが韓国人の納税貯蓄組合専務理事として来ていたことを知つていたかということなのですが、知つていたのではありませんか。
答 はい、それは知つておりました。
このように、同証人は鄭が韓国人納税貯蓄組合の専務理事としてきていたことを知つていながら、なんとかして隠そうとしたのである。そういう証人であるだけに、たまたま露頭を現わした真実の証言は重い。そして同証人は、韓国人納税貯蓄組合が組合員の申告を一括して代行し、税務署当局と話合を行なつていた事実を示す決定的な証言を、たまたま検察官の主尋問に対して行なつたのである。
問 それからはどのようなことをしたのですか。
答 概況調書により、どのような商売をしているか一応把握しそれによつて書類を作つたわけです。それから三月の確定申告になるわけですが、そのとき鄭さんという人が、組合の今年の申告額は、いろいろ検討した結果、これくらいになるといつて表をもつてこられたのです。
問 その表とは一覧表のようなものですか。
答 そうです。
問 一人一枚ずつになつているようなものでなく、誰誰は商売が何で所得額はいくら所得税はいくらという程度の記載をした一覧表だつたわけですか。
答 そうです。
問 鄭さんがそのような一覧表をもつて来たんだというのは、三月一五日の確定申告期限前なん日くらいのことですか。
答 期限前一〇日くらいの三月五日ころじやなかつたかと思います。
問 鄭さんからそのようなものをみせられ、証人としてどのようなことをしたのですか。
答 私の方には、その前に概況調査で歩き、把握したものがありますから、一覧表の数字を見、この分については一般的常識的にいつて低すぎるのではないか、もう少し考えた方がいい、というようなことをいつたと思うのです。
問 一覧表というようなものは、鄭さんの方に戻したのですか。
答 はい、そうです。
問 それで実際に確定申告書が提出されたのは、いつころのことですか。
答 確定申告書は、私が受けたのではありませんからよくわかりませんが、三月一五日に近い日だつたと思います。(同二二五丁以下)
…………………
問(検察官) 確定申告書を実際にだれが持つてきて、具体的にだれが受けたか、証人にはわからぬわけですか。
答 多分、持つてきたのは鄭さんとその下で働いていた事務の人だつたと思います。(同二一一丁)
このように組合幹部が組合員の所得や税額の一覧表を作成持参して税務当局と折衝した上で組合員の申告事務を代行していたのである。それが税務署当局に認められ、慣行となつていたからこそ、同証人は確定申告書を実際に誰が持つてきたのか現認していなくてもそれは鄭と事務員だと思うという推定をすることができたのである。なお、一覧表を作成するについては、第一審および原審の証人洪性万の証言(二冊一〇四丁以下、一三冊一七一丁)および原審の証人金珍寧の証言(一三冊一二二丁)に明らかなように、組合員全体としての税額ないし税率について、組合幹部と税務署当局との話合いがあつたのである。従来は、組合員全体としての税額ないし税率についての話合いに基づいて申告すれば足りたのであるが、同証人の証言にもあるように、昭和三八年一一月初めころに「入管の資料が大分参りまして、それにより新しく名簿をつくつた」ということがあり(同二〇五丁)、同証人が二係長とともに、鄭を案内役にして、韓国人ないし朝鮮人納税者の概況調査を行なつたということがあつて(同二〇八丁)、今度は組合の作成した一覧表をもとに個別的な話合いの上で、組合が確定申告書を一括作成して提出するということになつたのである(同二〇九丁以下)。
いずれにせよ、概況調査をするについても組合幹部が案内役として関与していること、組合員全体の所得額および申告額について組合幹部が一覧表を作成しそれに基づいて税務署当局と話合いをしていること、その結果組合が組合員全体の確定申告書を一括作成提出していること、これらの事実は同証人の証言によつても動かすことができない。
納税貯蓄組合の幹部が税務署当局とこのような話合をするというようなことは韓国人納税貯蓄組合に特殊なことであり、一般の納税貯蓄組合にはみられないことである。押田証人も次のように証言している。
問(後藤弁護人) 納税貯蓄組合の幹部が、正規の申告を前にして組合員に関する申告額見込一覧表というようなものを持ち、税務署に相談にくるなどということは、ほかにも例がありますか。
答 ほかにはないかもしれません。
納税貯蓄組合が組合員の申告を一括代行するというようなことも、韓国人の組合に特殊なことである。この点について、押田証人は魚市場や青果の仲買人などについてそういう例があつたかのように証言したが、持つて来たのは税理士か組合の役員かときかれて、それまでは覚えていないと証言し、更に大野弁護人の質問に次のように答えたのである。
問 他の業種について、だれかが同業者らの納税に関し、今年はこのようにしたいといつて一覧表か何かもつてくることがあつたのですか。
答 他のところについては、ないと思います。
問 たとえば、八百屋の組合とか、いろいろの同業組合があると思われるが、それらの組合のだれかが組合員全員について一覧表をもつてくるなどということは、通常考えられなかつたのではありませんか。
答 そうです。そういうことはありません。
…………………
問 通常、また、日本人であろうとなかろうと、ほかに全然例がないにかかわらず、韓国人の納税貯蓄組合代表者が、ほかの人の分についてまで自分たちの金額はこれだけですよといつて、一覧表など持つてくることについて証人としては、奇異の念を持たなかつたのですか。
答 品川ではこういうものかなあというかんじだつたのです。
問 品川というより、韓国人以外には例のなかつたことですね。
答 そういうことです。(同二二五丁以下)
このように、韓国人納税貯蓄組合が組合員の所得税の申告に関して税務署当局と折衝していたこと、その折衝に基づいて申告事務を一括代行していたこと、この慣行が韓国人納税貯蓄組合に特殊なことであり、かつ、税務署当局が関与し認めていたものであつたことが、本件当時、品川税務署所得税二課三係長として、その衝にあたつていた検察側証人押田義男の証言によつて、疑問の余地なく立証されたのである。
(2) 右慣行の由来
韓国人の組合だけが右のような特殊な業務を行なつていたのは、在日韓国人の組合として一般日本人の組合の場合と異る特殊にして相当な由来と事情があつたからである。このことは、第一審証人洪性万の証言にもあらわれているが、原審で更に明確になつた。
(イ) 証人羅鐘郷の証言
問(後藤弁護人) 納税指導の基本的指導方針は、具体的にいうと、どういうことですか。
答 納税に関する具体的資料の備付けの能力に欠けた人が多いので、その方面の資料の作り方、例えば金銭出納帳、出金伝票等の作成など納税に必要な資料の具体的な作り方を指導します。また資料の備付けがないので、各地区の組合では、資料なしに本人の意向だけでやる場合もあり、この場合には、従来の継続した額をアツプしてやるのです。
問 資料を作る能力がないため、資料なしで、税務当局との話合いで納税の申告をやつていた時期があるのですか。
答 税務当局のすすめによつて私共が納税貯蓄組合を作つた当初から継続して、税務署と話合いのもとに、そういう申告をして来ました。
問 それは、不正な申告をするということではなくて文字や数字にうといとか、理解ができない表現ができないという韓国人の実情からそうなつたということですか。
答 それもありますが、あのころは移動も激しく韓国人の実体の把握が非常に困難な事情もあつて税務当局のそういつた奨励があつて、納税貯蓄組合でそういう組合員の実体を把握してその業務の代行をしていたのです。
問 納税貯蓄組合の規約はそういつた事情を反映して明文化しているということですか。
答 それはいえます。事実日本の納税貯蓄組合の役割と在日韓国人の納税貯蓄組合の役割とでは、本質的にそういう特性があると思います(同一五六丁以下)。
(ロ) 証人金珍寧の証言
問(主任弁護人) 品川区韓国人納税貯蓄組合規約第四条1に規定する「各種納税の申告、納付その他に関する納税事務の代行」を、居留民団の支部でやるようになつた経緯がわかりますか。
答 私は、途中で入つたものですから、その経緯はわかりませんが、ただやつてみて、納税義務者たちが、文盲であるし、税金に対する考え方もまつたく持つていないものですから、これは、私たちでやつてあげなければならないと感じたわけです(同一三〇丁)。
(ハ) 証人洪性万の証言
問(大野弁護人) 昭和三七年終りごろ、品川の韓国人納税貯蓄組合の組合員数は、何人ぐらいでしたか。
答 所得税を納付する人が、七〇人から八〇人位いました。
問 その人達は、日本語が達者だとか、計算や税の申告の能力はありましたか。
答 そういう能力はある人は比較的少なかつたのです。
問 それはどうしてですか。
答 あまり教育をうけていなかつたためと思います。
問 それは、戦後に来た人だからですか。
答 それはほとんど戦前からの人で、戦後の人は法律的に住めないようになつていたのです。
問 日本社会の実情からいつて、高等教育をうける人がまれなことだからですか。
答 そうです。
問 平均的にいつて、小学校卒業位だからですか。
答 それも少いのです。旧制中学卒業でもほとんどいないのです。
問 小学校は義務教育だから、小学校は出ていると思いますが。
答 私共には義務教育ではなかつたのです。
問 事業のやり方ですが、帳簿をつけたり、出納簿をつけたりしているのですか。
答 そういう能力がない人ばかりなので帳簿をつける人は、ほとんどないといつていい位でした。ですから完備した帳面をつける人は、ほとんどいなかつたのです。
問 自分自身で概括的なことは、わかつていても細かく、本年度は総収入はいくら、支出がいくら、利益がいくらあつたという正確な数字を把握する人は少なかつたのですね。
答 そうです。
問 良い、わるいは別として、話合い申告をして来たということですが、在日本韓国人納税貯蓄組合の創立から、昭和三七年までそうだつたのですか。
答 そうです。
問 そういうことをやりはじめて一〇何年間もどうして続いたのですか。
答 戦後は、経済的な不安のため税金を納めることが難しかつたのです。私どもには社会的、政治的に制約があり、事業経営についても、日本人の経営と違つた支出があつたり、金融面でも日本人が年七分とか八分の低利で借りられても私どもにはそれがなく、高利で借りる以外になかつたのです。仕事をするについてもハンデイがあり、仕事の上での交際なんかも余計にかかるし、同朋の社会生活のための出費もありました。そういう実情を考慮に入れていただかぬと税金を納めることは大へんであり、そのために税理士をおくこともできないので、組合と税務署とが常時、折衝し、組合と協力してやつて行つた方が良いということで、税務当局も協調しながら話合いでやつてきたのです(同一七二丁以下)。
…………………
問 組合の方が組合員の納税についても申告についても代行してやつているということについては、税務署も承知していたといつたのはどうしてなのですか。むしろ、当初は税務署の方で希望した位だといいましたが、それはどういう理由なのですか。
答 戦後、間もないころですから精神的、経済的に不安定であり、税務署の組合員に対する認識もなくまた、組合員も帳簿や記録を備付けていないので調べるにしても困難だし、言葉も通じなかつたことや戦後の好ましくない感情もあつて、税務署の人と紛争をおこすこともありました。それで、組合が間に入つた方が円滑に行くということでそうなつたのだと思います(同一七八丁)。
(三) 組合員の意識
本件における問題点は、所得税の申告については、韓国人納税貯蓄組合が一括して交渉の上申告書を作成して提出するものと被告人が信じていたこと、又信ずるについて無理からぬ理由が存していたこと、少くも韓国人納税貯蓄組合が前叙のような理由から一括指導を被告人ら組合員に対しておこなつていたこと、税務署においてもこのような交渉や申告方式を承認ないし黙認していたとみられる事実の存すること、である。
原審で疑問の余地なく立証されたように、韓国人納税貯蓄組合は、組合員の所得税の申告にあたつて、税務当局と予め折衝した上で、組合員に申告額を割りふり、それに基いて組合員の申告事務を代行していた。一方、組合員としては、所得税と併せて在日韓国人の民生、教育等に必要な公費を一種の公課として徴収され、或いは寄付しなければならない事情にあつたこととも相俟つて所得税を含めた一切の公課の申告と支払については、一切組合に委任しておけば法的にも間違いないと考えていたのである。この間の消息は組合員である証人文永赫の証言に明らかである。
問(大野弁護人) 納税の方法について、昭和二七年ころから昭和四一年ころまでの間、実際に申告などの書込みをやつたのは、どなたですか。
答 納税貯蓄組合に委任といいますか、大体全部を納税貯蓄組合にお願いしてきたわけです。
問 細かく帳簿をつけたり、伝票を作つたりはしていないのですか。
答 はい、そういうことはしておりません。
問 具体的に数字など記入するのは、納税貯蓄組合であるにしても、いつたい収入がいくら、支出がいくらで、納税額がいくらということは、誰がきめていたのですか。
答 納税貯蓄組合の役員の方がきめられまして、君のところはこれだけだと通達してまいります。だから私としてはそれだけ納めさせていただいていたのです(同一三七丁)。
…………………
問(主任弁護人) 納税貯蓄組合について、組合員としてどのように考えていましたか。証人としては、組合を税務署か何かとでも思つていたのですか。
答 韓国民については、どこでもそういう団体、つまり組織ができていたのです。だから納税に関し一任してやつていればよいと考えていたのです。
問 ほかの韓国人居留民団の人たちも同様に思つていたのですか。
答 そうだと思います(同一四三丁)。
被告人も韓国人納税貯蓄組合の一員として所得税の申告と支払について一切組合に委任しておけば法的にも間違いがないと考えたのであり、そう考えるについては相当の理由があつたのである。被告人は日本に帰化していたが依然として組合員だつたのであり、従来のいきさつから組合を脱退できなかつたのであつて、日本に帰化していたことをもつて、その慣行と意識を他の組合員と区別して考える理由がない。
三、結論
以上のように組合員の所得税の申告は、所轄税務署と組合との交渉話合により、総枠及び内訳が決定され、組合員はただ組合の指示に基く納税をすれば良いとの慣習及びこれに基く規範意識が生まれ、かつ二〇数年にわたつて維持されてきたのである。もとよりこのような慣行を容認する法規は所得税法には存在しないが、税務署当局によつて長期間にわたつて容認されてきたのである。
徴税行政というのは、行政上の便宜を無視して成立するものではない。前記のように、韓国人に限つて特殊な性格をもつ納税貯蓄組合が生れ、税務署によつてその「特殊性」が長期にわたつて認められてきている以上、一般の組合員が、その申告及び納税を組合に委ね、その指示に従つて申告及び納税をしてきたのは、むしろ当然であり、客観的にはその申告が過少であつたとしても、それに対する税法上の処分を行なうことは格別、直ちに刑事上の可罰的違法の認識ありとして懲役刑を含む重い刑罰を科することは、果して刑事司法の正義の観念に合致するであろうか。
わが税務署当局は、今日に至るまで一度も韓国人貯蓄納税組合の規約を違法ないし不当として是正を求めることもなく、又徴税の便宜の上とはいえ、これと組合員各個の納税について集団的交渉ないし話合を行つてきた。更に、納税貯蓄組合法施行一〇周年を迎えて韓国人納税貯蓄組合は、昭和三六年一〇月一八日東京国税局長泉美之松から組合が「設立以来多年にわたり組合員一致協力して納税貯蓄組合の発展に多大の貢献をした」ことに対して感謝状すら授与されているのである(一三冊一一二丁、一一三丁参照)。
このような状況の下においては、組合員たる被告人が右組合の指導に基づき申告、納税するのは、むしろ自然の成行というべく、被告人が右申告納税したことが客観的に過少であつたとしても、これに刑事上の制裁を加えるに足りる違法の認識ありとするのは速断のそしりを免れない。いやしくも徴税の公的責務を負う徴税機関が、このような方法による韓国人納税貯蓄組合の存在と機能を長期にわたり容認してきた以上、その方法に従つて申告納税してきた被告人に刑罰を科することは、国家全体の機能からみてクリーン・ハンドの原則に反するといわざるをえない。
羅証人が証言しているように、日韓条約締結後、昭和四一年以後になつて、税務当局の方針が変つたのであつて、被告人はそのスケープゴートとされたのである。本件申告当時は、押田証人が証言するように、被告人は事前の概況調査は受けたが、過少申告の疑いがあるということで事後調査の対象にはなつたようなことはなかつたのである。それがその後の税務当局の方針変更と、たまたま暴力団の報復的告発があつたために手入れを受けることとなつたのである。このような場合、当時国籍が日本に移つたとはいえ、韓国人納税貯蓄組合の組合員として従来の慣行と意識のままに、所得税の申告を組合に委ねていた被告人に対し、刑事責任を追求するのは、司法の正義に合致しない。
問題は、単に割当納税の慣行があるかどうかということや、それ自体納税貯蓄組合に違反するかどうかということではない。それで片付けられる問題ではない。割当納税の慣行が韓国人納税貯蓄組合内部の組合と組合員しか知らない非公然の慣行であつたならば、原判決の判示で足りるであろう。問題はその慣行が税務署当局が長年にわたつて関与し容認してきた慣行であること、韓国人納税貯蓄組合と税務署当局との間のこの特殊な慣行が、特殊な歴史的、社会的、政策的事情から生まれた長年の慣行であること、したがつて、組合員は組合に一切を委ねて違法の認識を持つていなかつたし、それには相当の理由があつたということである。そしてまた、国家機関たる税務署当局がこの慣行に関与し容認して違反行為の誘因をつくつておきながら、国家がこの違反行為に刑罰を科するのは、国家の科刑権の正当性を自ら否定することになるのではないか、ということである。原判決は、これらの問題になんら答えていない。理由不備ないし審理不尽の違法があり、これを破棄しなければ、著しく正義に反するものと考える。
第二点 原判決が、「いわゆる割当納税の慣行はそれ自体納税貯蓄組合法に違反する」として犯意の不存在を否定したことは、大審院昭和八年六月二九日判決(大判刑集一二巻一〇〇一頁)に違反する。
第一点において詳述したとおり、本件割当納税の慣行が存在する限り、被告人が税務当局並びに納税貯蓄組合にこのような権限があると誤信して右慣行に従つて納税したことは、違法性阻却事由の基礎となる事実の錯誤であり、犯意が存しないというべきである。
本件での問題は、割当納税の慣行が納税貯蓄組合法に違反するかどうかということではなく、納税貯蓄組合法に違反するだけでなく所得税法に違反することにもなりかねない割当納税の慣行を韓国人納税貯蓄組合が税務署当局の容認の下に行なつてきており、したがつて被告人ら組合員が組合にその権限があり、組合の指示に従えば間違いないと信じていたという点にある。
問題をわかり易くするために例をとつてみよう。例えば、左側を通行すべき通路において、警察官の規制によつて右側を通行した場合、違法性は阻却されるであろう。
権限のない者の交通規制によつて右側を通行した場合、その者に権限があると誤信すべき相当の理由があつて、その指示によつて右側を通行した場合はどうか。この場合は違法性阻却事由についての錯誤であつて、犯意が阻却されるのである。
前記判例は次のように述べている。「其ノ行為カ或ハ法令ニヨリ或ハ其ノ他法律上犯罪ノ成立ヲ阻却スヘキ客観的原因ニ基ク場合ナリトセハ違法ナラサルカ故ニ罪トナラサルハ勿論ニシテ又斯カル客観的ノ事実ノ現在スルコトナシトスルモ行為者カ其ノ存在スルコトヲ誤信シタル場合ナルニ於テハ犯意アリトナスヲ得ス」の判例は違法阻却事由についての錯誤を事実の錯誤と解して犯意の阻却を認めたものである。
原判決が「いわゆる割当納税の慣行はそれ自体納税貯蓄組合法に違反する」ことを主要な理由として「脱税の犯意阻却或いは適正納税の期待可能性を欠く等の事由とは到底認められない」と判示したのは、犯意の成否と全くかかわりのない理由を理由として、犯意の成否と深くかかわる違法阻却事由の錯誤を無視したものであり、前者の判例に違反したといわなければならない。
第三点 原判決は審理不尽の違法があり、そのため量刑重きに失してこれを破棄しなければ著しく正義に反する。
一、原判決は少くとも刑法三八条三項但書によつて刑を減ずべきであつた。違法性の意識を欠く場合には、多く、なんらかの事情がある筈である。その事情のもとでは行為を違法でないと信じるのがまつたく無理もないという場合であれば、非難可能性はなくなるべきであり、責任は阻却されるものといわなければならない。これは期待可能性の理論と共通の基礎に立つものである。違法の意識の可能性はあつても、それが困難であるために違法性の意識を欠くときは故意の成立は妨げないが非難可能性が減少する。右三八条三項但書に「情状に因り其刑を減刑することを得」とされているのは、かような場合に適用があるものというべきである(団藤重光「刑法綱要総論」二三〇頁以下)。
二、本件の場合、第一点に詳論したように、韓国人貯蓄納税組合の割当納税の慣行が特殊な歴史的・政策的事情から税務署当局が長年にわたつて関与、容認してきた慣行であつて、組合員たる被告人が所得税の申告、納税手続を組合に一任して違法でないと信じてもまつたく無理もないという場合であつたのであるが、仮にそうではなく、違法の意識の可能性はあつたとしても、少くともそれが困難であるため違法性の意識を欠く場合であつて非難可能性が減少し、右三八条三項但書によつて、その刑を減軽されて然るべきものである。
三、原判決は「脱税の犯意阻却或いは適正納税の期待可能性を欠く等の事由とは到底考えられない」と判示するが、仮に期待可能性を欠く事由と考えられないとしても、非難可能性を減少する事由と考えられないかどうか、については全く判断していない。これは、割当納税の慣行が組合内部の非公然の慣行だつたのか、それとも税務署当局の公認による長年の慣行であつたのか、組合員のこの慣行に関する意識が現実にどのようなものであり、組合員の意識形成にどのような事情と要因があずかつていたのか、という点について、原判決がまつたく考慮しなかつたからである。原判決は非難可能性の有無のみならず、その多少についても考慮し判断し、少くとも右三八条三項但書を適用して減刑すべきだつたのである。これをしなかつた原判決は、審理不尽の違法があり、ひいては量刑甚だしく不当であつて、これを破棄しなければ著しく正義に反するものである。